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伝統を重んじるか否か~モンタルチーノの規格基準の件~

2011.10.05 (Wed)

2008年頃からトスカーナ・モンタルチーノの幾つかのワイナリーが提案した生産規定の
変更について、イタリアワイン界で舌戦が繰り広げられてきました。
それが、先日ようやく一段落。

ワイナリー・カーヴドッチ

事の発端は、アンジェロ・ガイア氏がコッリエレ・デッラ・セーラ(イタリアの新聞)の
インタビューで発言したコトがきっかけ。
ガイア氏は「違法に他のブドウをブレンドしたブルネッロの生産者は、規定の変更を求める
よう働きかけるべきだ」と語ったそうです。

具体的な内容としては、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノにフランス原産種であるメルロー、
カベルネ・ソーヴィニョン、プティ・ヴェルド、シラーが10~20%入っていたというのです。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはこの地の土着品種であるサンジォヴェーゼのみで造ることが義務付けられています。
そこにフランス原産種のブドウを混ぜた理由としては、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの
需要にサンジォヴェーゼの供給が間に合わないコト。
もうひとつは、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの力強い味をあまり好まない消費者(とりわけアメリカ人・・・アメリカへのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ輸出率は総生産量の約25%)
向けに、口当たりをよくする為だそうです・・・。
2003年、2004年ヴィンテージ以降のまだタンクや樽に入っているワイン、そしてブドウ畑が押収されたと言われるワイナリーは『Castello Banfi』、『Frescobaldi』、『Argiano』など。
疑惑がかけられているワイナリーは20社ほどで『Casanova di Neri』も監視下に置かれて
いたのです。
『Castello Banfi』はモンタルチーノで一番大きいワイナリー。
サンジォヴェーゼのブドウ畑が約180ヘクタール。
これはモンタルチーノにおけるサンジォヴェーゼの畑総面積中10%を占めます。
20ある畑のうち10の畑と、2003年ヴィンテージ・60万本のブルネッロ・ディ・モンタルチーノが押収され、工場の機能はブロック状態とまでいわれていたほど。

このガイア氏の発言をうけ、多方面から反論が湧きあがります。
『コル・ドルチァ』のオーナーで、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ組合前会長フランチェスコ・マローネ・チンザノ氏は「サンジォヴェーゼ以外のブドウの使用を認めるためにブルネッロ・
ディ・モンタルチーノの規定を変えると提案するような発言はやめてもらうべきだ」と述べ、
生産者の大多数が『ブルネッロはブルネッロのままであるべき』と考えている、と。
しかし、ロッソ・ディ・モンタルチーノの厳格な規定については緩和すべきとの声が高まって
いました。
1880年代にブルネッロ・ディ・モンタルチーノを生み出したパイオニア、フェルッチォ氏を
祖父にもつビオンディ・サンティ社のフランコ・ビオンディ・サンティ氏は、地域内の一定の区域はサンジォヴェーゼの生産に適していないと示唆したうえで、「ブルネッロの規定変更云々よりも、ロッソ・ディ・モンタルチーノへの他のブドウを認めることについて考えるべきだ」と。
地元の報道によると、ビオンディ・サンティ氏の提案はモンタルチーノの大多数の生産者たちの支持を受けていたといいます。
マローネ・チンザノ氏は「ロッソ・ディ・モンタルチーノに対する厳しい制約を緩和しようという
ビオンディ・サンティ氏の提案には賛成だ。だが、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノはこれまで
どおりでなければならない。」と。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの今後を決定する為の会合等は、2008年頃からたびたび開かれていました。
そして、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ組合は先月の9月7日、ロッソ・ディ・モンタルチーノの生産にメルローやカベルネ・ソーヴィニョンなどの品種をブレンドすることを認めるかどうかについての投票を行い、現規定から変更がないことを決定。
ジャーナリストでワイン評論家のフランコ・ジリアーニ氏が明らかにした決定投票の内容に
よると、678の全投票数のうち、210票が賛成、465票が反対、3票が白紙という結果に。
モンタルチーノ地区のブルネッロ・ディ・モンタルチーノに力を入れる生産者よりロッソ・ディ・モンタルチーノを中心に造る生産者の数が上回ったコトも背景にあったようです。
なお、有名ワイナリー『イル・ポッジォーネ』のファブリツィオ・ビンドッチ氏は、投票前に
英ワイン専門誌『Decanter』にて、個人的には“サンジォヴェーゼ派”であることに変わりは
無い、としながらも、他のブドウ品種をブレンドすることで、より世界の人々に受け入れられる味にできるという考えから、賛成の立場を表明していました。
同組合のエツィオ・リヴェッラ氏は「今回の結論にいたるまで組合内では非常に議論されたが、国際的にも高い評価を受けるワインとしてその特色と価値を守った形だ。」と述べました。

結局大手の戦略より、伝統が勝った形で幕を閉じたこの騒動。
特にロッソ・ディ・モンタルチーノ・ファンの僕としてみれば(ブルネッロでなくロッソの方ね)、
ひと安心な結末でしたが、大手ワイナリーの伝統への気持ちが希薄だったコトには複雑な
思いもあります。
疑惑のかけられたどのワイナリーも好きなんだけどなぁ。
ズルはダメですね、ダメ、絶対!!
それと、ワインに対する国際基準の評価は「フランス原産種のブドウを加えれば善し」と
されるのでしょうか?
イタリア原産種のブドウと伝統で勝負して欲しいモノです!!
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